誰でもわかる先天性心疾患

先天性心疾患など小児循環器をなるべくわかりやすくお話します。主に看護師さん向けですが、小児循環器を専門としない医師向けの内容も多く含まれています。教科書ではわかりにく内容の理解の助けになればと思い書いています。

小児循環器の心エコーについて(肺高血圧の推測) 〜エコーをあてない人はここだけ見て!その2〜 基本19

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エコーについての最低限知っておいてほしい事を4つに絞って話しています。

 ・動き

 ・逆流の程度

 ・狭窄の程度

 ・肺高血圧の推測

以上の4つです。

今回は、心エコーの4つ目の項目、肺高血圧についてです。

前回は心エコーの動き、逆流、狭窄について話をしましたので、必要な方は前回の記事を参照してください。

 

肺高血圧とは・・・。

肺高血圧のエコー所見を話す前に肺高血圧について少し話します。

普通の人は肺の血圧は、せいぜい収縮期で20-30mmHg程度です。

全身の血圧は収縮期で100mmHg程度はあるので、それと比べるとだいぶ低いですよね。

この肺の血圧が何かの原因で上昇した状態が肺高血圧です。

みなさん、PH(pulmonary hypertension)と言ってます。

なので、PHと言う言葉にも慣れるようにしましょう。

 

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肺高血圧とは

図:肺高血圧

 

この肺高血圧ですが、簡単にいうと2つ困ったことがあります

 ・肺に血液が流れにくい!

 ・右心室に負担がかかる!(右心不全)

肺高血圧では肺の血管は収縮して血圧を上げているため、肺に血液が流れにくくなります。またその肺に血液を流すため、右心室もすごく頑張らないといけなくなります。

普段は右室圧20-30mmHg程度出していれば十分なのに、

PHで肺の血圧が100mmHgになると、(上図のように)右室も肺に血液を送るため100mmHgもの血圧が必要になります。

このため、肺に血液が流れにくいだけでなく、右心室にも負担がかかります。

これが肺高血圧です。

これは余談ですが、一応定義としては

肺高血圧は、「肺の平均圧が20mmHg以上」の時を指しています。平均圧です。収縮期圧ではなくて。

書いてはみましたが、全然重要じゃないので、この数字は覚えなくていいです。肺に血液が流れにくく、右心室にも負担がかかる、これだけわかっていればOKです。

 

心エコーにて肺高血圧の推測

ココからが心エコーでの肺高血圧についてです。

心室の場合、肺高血圧をエコーで推測する事ができます。

心房中隔欠損症(ASD)、心室中隔欠損症(VSD)や二心室修復術後などでは肺高血圧の有無や程度をエコーで評価している事によく遭遇すると思います。

でも、どうやって評価しているのか、実は結構わかっていない人が多いと思います。

ちょっと長いですが、考え方を理解するように頑張ってみてください。

これがわかると、エコーの理解が1歩レベルアップすると思います。

 

実はこのように考えています。

 前提として、「肺動脈や肺動脈弁に狭窄がない」として推測。

     ↓

 狭窄がなければ、肺の血圧=右室の血圧 となる。

     ↓

 右室の圧が高いかどうかを評価し、肺高血圧があるかどうか判断している!

 

ということです。先程の話を踏まえると理解しやすいかと思います。

なので、肺高血圧といっているのですが、評価しているのは、

ただ右室圧が高いかどうかを評価しているのです。

では、どのようにして評価しているのでしょうか?

 

エコーでは下記のように主に3つの評価方法があります!

次の3つを覚えましょう。(考えて理解すれば、覚えようとしなくてもいいです。)

 ① 三尖弁の逆流のflowで評価

 ② 短軸の中隔の形で評価

 ③ VSDがあれば、VSDのflowで評価

先ほど話したとおり、

肺高血圧=右室圧が高い、と考えて評価しています。これから1つ1つ説明していきます。

 

① 三尖弁の逆流のflow

よく使われる、三尖弁の逆流を説明します。

これは三尖弁の逆流(TR)のflowを測定し、ベルヌーイの法則、4×V2で圧較差を推測し、右心室の圧を予想しているのです。なんの事を言っているかわからない人は下記の図を見ながら考えましょう。

 

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図:三尖弁の逆流(TR)のflow

 

まず大前提として、この指標は三尖弁の逆流(TR)しっかりとれるときしか使えません!

なのでTR mild以上でなければ、確実にはとれないと思います。

TRがない人ではとれませんので、TRがない人はこの方法で肺高血圧の有無を推測することはできません。

しかし、普通の人でもtrivialからmild程度のTRはありますので、比較的多くの人で評価できます。

 

心臓は右心室が収縮する時、右室圧は最も高くなります。

この時三尖弁から逆流がでるので、flowから流速がとれます。流速から圧較差を推測する事ができます。前回もでてきた、4×V2mmHgを使ってとれば圧較差が推測できます。

右房の圧はせいぜい5mmHgなので、圧較差がわかれば、右室圧も推測できるということになります。

実際の例で示します。

普通の肺高血圧がない人の場合、右室圧は収縮期でせいぜい20-30mmHgぐらいなので

TR flowは普通2m/sec程度です。(4×2×2=16mmHgなので右房圧が5mmHgと考えると右室圧は5+16=21mmHgになります。)

普通の肺高血圧のない人はTR flow:2m/sec台以下になります。

例えば、肺高血圧の人であればTR flowはもっと早くなります。

TR flowが4m/sec以上であれば、圧較差は4×4×4=64mmHgであり、右房圧を5mmHgとすると右室圧は64+5=69mmHgとなり、中等度以上の肺高血圧があると考えられます。

 

このようにTR flowを測定してやることで、肺高血圧の有無を予想する事ができるのです。

簡単に結論だけ言うと、

 ・TR flow 2m/sec台は普通、4m/sec以上であれば確実にPH

と覚えてもらったらいいかなと思います。

ちなみに自分自身暗記が苦手なので、なるべく覚える数字は少なくするように心がけて書いています。「4」という数字はいろんなポイントになるので、なるべく覚えてください。

 

② 短軸の中隔の形で評価

次に短軸の形での評価の仕方を説明します。

図を見てもらったほうが早いので↓の図を見てください。

 

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図:短軸

 

普通(肺高血圧がない)は左室圧は収縮期で100mmHgに対して、右室圧は収縮期で20-30mmHgなので、左室圧の方が高く、上の図のように左室は円形になります。

→エコー所見では普通(肺高血圧がない)の場合 

 IVS is round at E/S (収縮末期に中隔は円形、という意味) 

などと書いてあります。

肺高血圧だと右室圧が上がるため、

心室は右心室に押され、上の図のように、中隔の形が扁平になっていき、左心室の形はDの字のような形(スイカを切った時のような形)になります。

→エコー所見では肺高血圧の場合

 IVS is flat at E/S とか IVS is deformed at E/S(まっ平らじゃないけど押されている)

などと書いてます。ちなみに少しでも中隔の変形があれば、肺高血圧はあると考えられますし、TRがなくても評価できますので、これもよく使用されている指標です。

なので、エコーの短軸で左心室がまん丸でなければ、肺高血圧はある、と考えてもらえばOKです。

 

最後にもうちょっと頑張ってください。

 

③ VSDがあれば、VSDのflowで評価

この指標はVSD(心室中隔欠損症)がある人に限ります。

VSDとは右室と左室の間にある「孔」なので、右室と左室に血圧の差があれば、VSDのflowでその圧較差を推測できます。いつもと同じく圧較差の推測は4×V2mmHgで推測するのです。もう何回もでてきたので、そろそろ覚えましたか?

肺高血圧がない場合はRV 20-30mmHg、LV 100mmHgなので、圧較差はおよそ70mmHgになります。VSD flowでいうと4m/sec=4×4×4=64mmHgなのでPHがない時はflowは最低でも4m/sec以上はとれます。

逆にPHならば、RV=LVに近いので、flow 1m/secとかしかとれません。下の図はflow 2m/secとれていますので、圧較差4×2×2=16mmHgであり、LV 100mmHgならRV 84mmHgとなり、立派な肺高血圧がある、と考えられます。

つまり、VSD flowでPHを推測できますが、PHがないとすれば、VSD flowは4m/sec以上は確実にとれます。VSD flowが4m/sec未満であれば、PHはあると考えます。

 

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図:VSD flow

 

  ・PHがない人:VSD flow > 4m/sec

  ・PHがある人:VSD flow < 4m/sec

 

あまり難しく考えたくない人は上記だけ覚えてもらってもいいですが、一回なぜこういう結論になるか考えておくと覚えるのは早いと思います。

またまた4と言う数字ですし、覚えやすいでしょう?

 

以上の3つで肺高血圧を評価していきます。

肺高血圧をまとめると

肺動脈狭窄などがないことが前提で、PH=右室圧が高い、という事を評価しています。

所見としては

 ・TR flow 2m/secくらいは普通、4m/secは確実にPHあり。

 ・短軸で中隔が少しでも変形していれば、PHあり。

 ・VSD flowが4m/sec以上あれば、PHはない。

となります。

エコーを実際にやっていないとわかりにくいと思いますが、このような方法でPHを評価しています。

 

ちょっとエコーでの肺高血圧の推測は重かったかもしれませんが、これを理解してもらえたら僕らとしてもうれしいです。

 

まとめ

まとめると心エコーについては2回に渡り話をしてきました。

心エコーをしない人でもできたら、ここがわかっていてほしい、というところを書いたつもりです。まとめると下記のようになります。

 

① 動き FS(30以上だといい)、EF(60以上だといい)で表す。

② 逆流 trivial、mild、moderate、severeの4段階表記。moderate以上は治療を。

③ 狭窄 4m/sec以上だと治療適応なくらいの狭窄。

④ 肺高血圧 右室圧を求めることで推測。以下の3つで評価。

   TR flow(4m/sならPH、2m/sなら普通)、

   短軸の形(普通はround、PHは扁平)、

   VSD flow(4m/s以上ならPHなし)

 

上記4つになります。

もしエコー所見を見るときにはたくさん書いてあるので、理解が難しいかもしれませんが、いらない情報も多く記載しているので、上記の4つだけ拾い上げて理解するように頑張ってください。

それ以上はわからなければ、医師に質問したらいいのではないでしょうか。

 

心エコーに関しては以上になります。

今回は今までで一番長かったですね。

「基本」もだいぶ話したのではないでしょうか。だいぶ疲れましたね。

今後は、そろそろ疾患について話そうかと考えています。